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北のDreamMaker VOL.4 地球にやさしくをモットーに。/ 株式会社NAZCA 代表取締役 君島 忠男 さん

Human 2016年3月23日

北大R&BPの歩みを紹介する「北大R&BP体験記」。

第四回は、株式会社NAZCA(ナスカ)代表取締役 君島 忠男さんにご登場いただきました。

スマートフォンの救世主。厚さわずか1.2nm(ナノメートル)のフッ素の自己成膜工法「CS1」(商品名)を開発。スマートフォンなどのタッチパネルをCS1シートで拭くことにより表面に共有結合でフッ素の結晶膜が出来、汚れを防ぐという優れものだ。

平成17年に東京で起業した君島さんは、北大リサーチ&ビジネスパークにも拠点をおき北海道大学と共同開発したこの製品「CS1」の販売をこのたび開始した。テレビ東京でもすでにとりあげられている「CS1」の開発までの道のりをお聞きしました。

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料理を科学する
~厨房でのセラミックとの出会い~

君島さんは、栃木県のご出身。
元々理系の頭脳と自負する君島さんは、当然のように将来は理系の道に進もうと決めていたようだが、ご両親の方針もあり、理系の道に進むことをあきらめ、経済学を学ぶことに。ご両親が開業したというこだわりの料亭を手伝うために一度は畑の違う和食の料理人をめざし、住み込みで修行を積んでいたこともあったという。3日で逃げ出すと言われる老舗料亭の厨房修行。元々体育会系でスキー部と少林寺拳法で鍛えぬいた体力と根性で君島さんは厳しい修行も苦と思わずこなしていた。
根っからの科学者魂の君島さんは、修行を重ねていたそんなある日、日本料理の長い歴史が生んだ数々の技法にほとんど解き明かされていない化学との密接な関係を感じたという。調理方法等ひとつひとつに「なぜ?」という疑問がうかび、自分で調べてみようと料理の修行をしつつ勉強をし始めた。
高校2-3年と理系進学クラスで学んだ基礎知識を生かし、料理修行を物理化学の観点から捉え、「なぜ」を解明・「料理を科学する」先駆者を目指す。
一例を挙げると、当時(1979年)厨房では、青もののより鮮明な色を出すために「塩」を入れたり、出汁は「鰹と昆布の合わせ出汁」がよいという(関西では昆布出汁が主流)。タレや焼酎などは「甕(かめ)」で保管すること、それぞれが昔から一番良いとされてきた。しかし、なぜ?と考える料理人はほとんどみあたらなかったという。出汁に関しては硬水(関東)、軟水(関西)の違い。合わせ出汁は鰹(イノシン酸)5対体昆布(グルタミン酸)1が黄金比率。甕においては、入れることにより角がなくなりまろやかさが増す。なぜだろう?いろいろと「なぜ」を解明する中、特に興味を持ったのが「甕」の未知なる力だったという。これが厨房での君島さんとセラミックとの最初の出会いである。疑問を解決しないと前に進めない性格のため、自分で調べてみようと独学でセラミックについて勉強をはじめた。
セラミックからはいったい何が出ているのだろう?
中でも興味を持ったのは遠赤外線やマイナスイオン。当時交流のあった芝浦工業大学の先生の教えを乞いながら、セラミックとセラミックから発生するマイナスイオンとの関係に夢中になり日々研究を重ねるうちに、NAZCA環境保全事業部(1996年、現 株式会社NAZCA)を創設しマイナスイオン発生素材の研究開発に取り組むこととなる。

「料理を科学する」が世界初の発明に~天才科学者のひらめき~

共同開発者の北海道大学の川口俊一先生との出会いは、君島さんが代表を務める(株)Wグループ(飲食関連会社)「イタリアンバルSOU奏、浅草橋支店」でのパーティーの席でした。共通の知人の紹介ということや出身が栃木県宇都宮市と同郷であること、さらにお酒の力も借り、初対面の時から意気投合。マイナスイオンの研究をしている君島さんは、大学院で地球環境科学の研究の一つとして光触媒(プラスイオン)専門の川口准教授とは熱い激論を交わす仲に。副交感神経を刺激するマイナスイオンと交感神経を刺激するプラスイオン。相反する研究をしている2人がこうして出会い、幾度となく激論を交わすうちに川口先生はあることに気が付く。それは、NAZCAのセラミックにも光触媒にも共通して使用している酸化チタンを、透明且つnmレベルでどんな材料にでも成膜する方法「自己組織化法」というものである。それは、君島さんが得意とする料理科学の「乳化」の話でひらめいたという。
二人の激論から生まれた世界初の技術は、ウシオ電気株式会社の力も借り酸化チタン膜を応用した新規材料の開発へとつながっていく(NAZCAとウシオ電機の共同特許)。
川口先生のひらめきから4か月後の出来事である。

北大北キャンパスとの出会い

その後、川口先生と一緒に研究し打ち合わせを重ねるようになり、遠距離が気にかかり北海道にも拠点をおくことを考え始めた君島さん。
北大北キャンパスの北大リサーチ&ビジネスパークには、中小企業基盤整備機構北海道本部の管理運営する北大ビジネス・スプリングのほかにノーステック財団(北海道科学技術総合振興センター)が管理運営するコラボほっかいどう、北大のオープンラボラトリーなど企業の研究者が入居可能な施設がいくつかある。君島さんは、平成26年夏に北大ビジネス・スプリングにラボを開設した。
君島さんが入居を決めた北大ビジネス・スプリングには、インキュベーション・マネージャー(IM)が数名常駐し、入居者の事業活動における様々な課題の解決に向け、ハンズオンで対応してくれるほか、事業支援メニューや他の企業との交流も含めたセミナーの案内等入居企業のビジネスを強力にサポートしてくれるのが大きな魅力でもある。
インキュベーション・マネージャーのみなさんには日々いろいろな節目で助けられ感謝しているという。
後々は本社を東京から北海道へと思っているほど現状に満足している様子であった。

イタリアンバル「奏」から産まれた最高傑作~キーワードは‘こする’~

北大ビジネススプリングにラボを構え、すぐに取り組んだのは「もっと人にも地球にも優しい成膜法はないのか」だった。既に開発の成膜法では、成膜基盤表面の下処理をするのに特殊な波長の光線を射的使用する。その際にオゾンを発生させてしまうことになるという。下処理はどのような役目をするものなのかと、君島さんは川口先生に訪ねると
原子・分子レベルで表面をきれいにして、基盤表面の化学構造を構造変化させるものとのこと。表面をきれいにするのは自分の得意とするところと、化学洗剤、食物といろいろと研究に没頭したという。BSに入居してわずか2ヶ月という超短期間での開発に成功する。
その発明は、優秀な科学者であれ当然考えもつかない化学の常識を覆す破天荒な方法によるもので、半分科学者、半分料理人ならこその発見と君島さんは微笑み自負する。
「こする」がキーワードである。
普通の科学者は、化学反応において不接触が常識で「浸漬(しんせき)」することはしても「こする」ことには間違ってもしない。君島さんはそこに目をつけた。さすが元料理人の発想である。CS1の下処理役目をするA液シートに使用している液はすべて食することができるもの。「地球にやさしくをモットー」にしている君島さん、そして元料理人ならではの発想から生まれた力作である。
これが科学のおもしろさですよと君島さんは嬉しそうに語る。
社会人としてのスタートとして接点のあった「料理」
料理人というのは元々科学者だから。料理人から科学者へ。君島さんの歩んできた道である。
この北の地で生まれた最高傑作は、現在某有名家電量販店で販売しており、この春より全国の多数の量販店で販売されることになる。

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水滴の撥水の様子
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油性ペンが滲んで書けません
油性ペンを簡単に拭き取れます
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接触角116度

「自他共楽(じたきょうらく)」

永年少林寺拳法をたしなみ現在は教えているという君島さん(現六段)。
座右の銘は、少林寺拳法の理念に基づいたものである。
自分のことはもとより半ばは他人の幸せを願う。
自分のことばかりを考えず大変な時こそ人のことを考えてゆきたい
儲け主義よりも、美味しくてお値打ち感のあるものを提供したい。
前職のWグループでのお店でのモットーはそのままマーケティングの世界でも活かされている。
そして、この精神が常に君島さんの根底にある。
研究・発見の毎日の中で他人の喜びを真っ先に考える君島さんの大きな魅力である。

材料に機能を付加させる

株式会社NAZCA
会社のロゴは、ナスカの地上絵からイメージしたもの。
宇宙に対するメッセージ。地球に存在する生物全てのメッセージ。それは、地球環境を破壊している自分達人間へのメッセージとして空に映し出されている。そんな思いで地球環境科学に取組んでいるという。
NAZCAは、設立当初より環境を大事に地球にやさしくかつ地球再生をリードする企業をめざし邁進している。
経営者とは、何かに特化しているだけでなく、全般的に把握し専門的な知識については、その道の専門家にまかせ組み立てていく。いわゆるプロデューサーですと君島さん。
この度のCS1は、目指す開発の富士山でいうと2合目程度。目指す8合目は、同様の工法でnmレベルの太陽光パネル(窓ガラス等へ機能付加)を開発すること。公表は今はできないが、既に7合目までは来ているという。是が非でも開発に成功して、原子力発電の要らないクリーンエネルギーを世界中に広げていきたい。夢を語る君島さんの話を聞いていると、利用者の喜ぶ顔が見えるような気がした。

株式会社NAZCA

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本社/東京都台東区浅草橋二丁目23-8足立ビル2F
TEL/03-6240-9876
代表者/代表取締役 君島 忠男
従業員数/5名
設立/平成17年12月
事業内容/

  • 自己組織化酸化チタン膜を応用した新規材料開発
  • 携帯電話用機能性フィルムの販売
  • 酸化チタンコート光触媒フィルム製造・販売
  • マイナスイオン発生セラミックス製造・販売・食品微生物検査